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2023年3月31日 (金)

「敵基地攻撃能力」Q&A(改訂版)

敵基地攻撃能力Q&A(改訂版)

Q1   敵基地攻撃って何ですか? 

 A 岸田政権は、敵基地攻撃能力の保有で「鍵」を握る装備として、長射程ミサイル(スタンド・オフ・ミサイル)の大量導入、開発を狙っています。それを載せる戦闘機や護衛艦、潜水艦を大量に増強し、地上基地も大幅に増強する計画です。

 具体的には何ですか?

(チラシを見て下さい。配備、開発が予定されている主な長射程のミサイルは、すでに保有する「12式対艦誘導弾」の射程を1キロに伸ばした「能力向上型」、マッハ5以上の極超音速で飛び、射程2キロの高速滑空弾能力向上型、マッハ5以上で飛び、射程3キロの極超音速誘導弾、アフガニスタン戦争やイラク戦争で先制攻撃に使われた射程1600キロのトマホークです。射程が2~3キロとなれば、沖縄に配備した場合中国や北朝鮮の主な都市がすっぽり射程に入ります。まさに他国に対する脅威そのものです。(地球一周が4万キロですから20発分の距離は地球一周してしまいます。)  (とりわけ二つの極超音速兵器は高速であるうえに、飛行コースを変えられるため迎撃が困難です。防衛省は10年後の将来像として極超音速滑空弾と極超音速誘導弾を“主役”にすえようとしており相手国からは重大な脅威となります。

 なんのために敵基地攻撃能力を保有するのですか

 端的に言えば米国の「統合防空ミサイル防衛」(IAMD)に参加するためです。

IAMDは「対中国包囲網」を敷く為に同盟国と一体で構築するミサイル防衛の仕組みです。

相手のミサイルを撃ち落とす作戦と敵基地攻撃の作成を「攻守一体」で進めるものです。

しかも攻撃対象は相手国のミサイル基地だけではなく、日本でいえば首相官邸や防衛省などの指揮統制機能

 それは日本の防衛に役に立つのでしょうか?

米国が中国との軍事的覇権争いに勝つためのシステムで、日本防衛とはまったく関係ありません。米国の統合参謀本部が2017年作成したIAMDの基本原則には、敵の航空機やミサイルの離陸発射の「前」と「後」の双方で破壊すると書かれています。「先制的にも、対処的にもなる」とも書かれており、先制攻撃を宣言しています。これらが攻撃目標ということは、全面戦争をやるということです。IAMDは、米軍と同盟軍の「切れ目ない融合」が必要だとしています。米軍と自衛隊が「合金」のように融合してたたかうことになります。

 岸田さん敵基地攻撃保有は「専守防衛」範囲と言っていますが

それはまったくの大ウソです。敵基地攻撃能力の保有は、「専守防衛」を完全に投げ捨てるものです。政府は「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」と言い換え本質を隠しています。今までが矛で日本は盾でしかなかったのが「敵基地攻撃能力」という矛で身構え「脅威」で周辺国を脅しつけるやり方は「専守防衛」を完全に投げ捨てるものです。

 敵基地攻撃したら日本はどうなるのでしょうか?

 敵基地攻撃を行っても、相手国のすべての基地をつぶすことはできません。必ず報復がやってきます。そうなれば、日本を焦土化する危険があります。

 政府は長射程ミサイルをどこに配備するかは明らかにしていませんが、南西地域の防衛体制の強化は強調しています。沖縄が大軍拡の最前線に立たされています。万一有事となったら沖縄に甚大な被害をもたらします。石垣市議会は2022年12月、「自ら戦争状態を引き起こすような反撃能力をもつ長射程ミサイルを石垣島に配備することを到底容認することはできない」との意見書を採択しました。

 危険は沖縄だけではありません。日本全土に報復攻撃の危険が生まれています。そのことを示すのが、岸田政権がすすめようとしている全国約300の自衛隊基地に保有している2万3000棟の「強靱(きょうじん)化」計画です。化学、生物、核兵器などの攻撃(「CBRNe」=シーバーン)に耐えるよう地下化するものです。核戦争も含めて、日本全土の戦場化を想定して自衛隊基地の強靱化をすすめようとしているのです。

 抑止力で日本ると言いますが

「抑止の本質は、昔も今も恐怖である」―防衛大学校の教授がこう述べているように、相手側に脅威を与えることで、攻撃を思いとどまらせようとするものです。

 仮に、日本が相手に脅威を与えると、相手は、その脅威に対して脅威で応えようとします。軍事対軍事の脅威になっていき、エスカレートして軍拡競争になっていきます。

 双方が戦争を望まなくても、何らかのきっかけで衝突が起こってしまう。これが「安全保障のジレンマ」です。

 「日本を守る」という名目で、抑止力、つまり相手への脅威を高める行動をとれば、相手も脅威で応えて、結果として、日本が戦争に陥るリスクを高めることになってしまいます。抑止力によっては平和を守れません。

 このまま軍事費を増やす日本は軍事大国になりませんか

 政府は軍事費を5年間で43兆円にしようとしています。その後もGDP比2%以上の軍拡を続けるとし、これで終わりではありません。GDP比2%以上となれば、現在年間5兆円超の軍事費は、11兆円となり、(おっしゃる通り)米国、中国に次ぐ世界第3位の軍事大国になります。

 軍事費を増やすことで暮らしの予算は減らされるのではないでしょうか?

 すでに23年度予算は、軍事費が異常に突出し、暮らしの予算が圧迫されています。まず、社会保障費を1500億円削減。学費などを含む文教予算は少し増えましたが、物価高騰にはまったく追いついていません。暮らしの予算があらゆる分野で圧迫される異常な姿です。さらなる軍拡が続けば、社会保障や福祉に回すべき予算がいっそう削られることは明らかです。

10 軍事費5兆円増を止めて暮らしの予算を増やしたらいいのはないでしょうか?

 おっしゃる通りです。)もし、軍事費5兆円を暮らしにあてたら何ができるのか。日本は医療費の窓口負担がヨーロッパなどの先進国と比べ非常に重い国です。この全国民が払っている窓口負担は年間約5兆円です。5兆円あれば、多くのヨーロッパが実施しているような窓口負担ゼロの国ができます。

 大学の学費無償化に使った場合、授業料ゼロが実施できます。授業料ゼロは2兆6000億円。入学金ゼロは2200億円、本格的な給付奨学金を大規模にやっても5000億円です。これらを合わせても3兆3200億円です。

11 総理は敵基地攻撃能力を持っても日本は独自の判断で動くと言っていますが

米軍と同盟国の軍隊は「切れ目のない融合した軍隊として作戦を行います。

自衛隊が、独自の指揮系統のもとで行動することはありません。日本の防衛とは関係なく米国が戦争を始めれば一体となって攻撃を行いことになります。相手から報復攻撃を受け、焦土化する危険が現実のものになりかねません。226の赤旗日曜版のスクープで全国300基地の化学・生物・核兵器による攻撃に耐える為の強靭化計画が明らかになりました。日本を守るどころか、日本に戦争を呼び込んで国土を焦土にしてしまうのが敵基地攻撃の正体です。岸田首相の「日本を守るため」は大うそです。

12 憲法9条のもとで敵基地攻撃能力が持てるのでしょうか

(いい質問ですね。)敵基地攻撃能力と憲法についての、政府の統一見解は、1959年3月の伊能繁次郎防衛庁長官(当時)の国会答弁です。

 伊能氏は「他に全然方法がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくことは法理的には自衛の範囲に含まれており、可能」としつつ、現実問題として起こりがたいので「平生(常日頃)から他国を攻撃するような、攻撃的な、脅威を与えるような兵器を持っていることは、憲法の趣旨とするところではない」と述べています。つまり、他国に脅威を与える敵基地攻撃能力の保有は憲法違反だと明確に言いきっているのです。

 「他に方法がない」とは、国連も安保条約もないという場合です。政府は安保条約があるから「他に全然方法がない」ということは起きないから、敵基地攻撃能力は持てないとも言ってきました。岸田首相は、憲法解釈の変更が明らかなのに、「変更していない」と言いはっています。憲法論の根本の問題で“ウソ”をついています。

 「専守防衛」との関係についても、田中角栄首相(当時)が、専守防衛とは「防衛上の必要からも、相手の基地を攻撃することなく、もっぱらわが国土およびその周辺において防衛を行うこと」と述べています(72年10月)。「専守防衛」と敵基地攻撃は両立しないのです。「専守防衛の範囲内」という岸田首相の主張も成り立ちません。

13 集団自衛権との関係はどうなんでしょうか

 政府は、憲法9条のもとでの集団的自衛権の行使はできないと一貫して答弁してきました。それを2014年に安倍政権が百八十度政策を転換して、集団的自衛権の行使は、できるとしました。15年成立の安保法制では、日本が武力攻撃を受けていなくても日本の存立が危なくなる「存立危機事態」だと政府が認定しさえすれば、自衛隊は米軍と一体になってたたかうことができるとしています。このもとで敵基地攻撃能力を使えばどうなるでしょうか。日本は攻撃を受けていないのに相手国の領土に攻め込むことになり、相手国から見れば日本からの事実上の先制攻撃となります。

 政府は集団的自衛権でも「必要最小限度の実力行使」と言っていますが?

それも嘘です。集団的自衛権の行使として敵基地攻撃を行った場合は、自衛隊の武力行使が際限なく拡大してしまうのです。

 個別的自衛権の場合は、武力行使の要件である「必要最小限度の実力行使」の定義は明瞭です。日本を侵略している他国の軍隊を日本の領土、領海、領空の外に排除する―、そのために必要な最小限度と定義できます。

 ところが、集団的自衛権の行使として敵基地攻撃を行った場合、必要最小限度の実力行使をどう定義するのか。岸田文雄首相は「個別具体的に判断する」というだけで、必要最小限にとどまる保証がどこにあるのかを言えませんでした。

 つまり、米軍が勝つまで自衛隊が一体となって戦争をどこまでも続け、武力行使が際限なく拡大してしまうのが集団的自衛権のもとでの敵基地攻撃です。これは憲法違反であることが明瞭です。

 岸田首相は「ウクライナは明日の東アジアだ」と言いますが本当でしょうか?

それも為にする議論ですね。ウクライナで起きた侵略の責任は国連憲章を無視し、侵略戦争を始めたロシアにあります。ロシアの蛮行は絶対に許されません。ただ、戦争になった背景には軍事対軍事に陥ってしまった外交の失敗がありました。

 一方、アジアとヨーロッパを比べたときにいくつか大きな違いがあります。第1の違いは、アジアには本格的な軍事同盟が、米軍基地を置いてある日米同盟、米韓同盟の二つだけです。かつて、南アジアから中東にかけてあった中央条約機構(CENTO)はすでに解体されています。アジアは非同盟中立が圧倒的な流れです。一方、ヨーロッパには北大西洋条約機構(NATO)があるなど大きな違いがあります。

 第2は、アジアには東南アジア諸国連合(ASEAN)という平和の共同体が発展し、東アジアサミットのような包摂的な多国間の協力の枠組みがあり、アジアの安全保障の重要な担い手となっています。

 第3は、アジアの重要な国である日本が戦争放棄と戦力不保持を明記した憲法9条を持っていることです。9条があることで、自衛隊は1人の外国人も殺さず、1人の戦死者も出していません。これはヨーロッパにはないアジアの宝です。

 排他的な仮想敵国を設ける軍事ブロックでは決して平和はつくれません。すべての国を包み込む平和の枠組みをつくることこそが、アジアの平和への道です。

 軍事ではなく外交で平和的な秩序をつくるにはどうすればよいですか?

  日本共産党の掲げる外交ビジョンは二つの根本的な考え方があります。一つは、あらゆる紛争を国連憲章に基づく平和的な話し合いで解決することです。もう一つは、地域のすべての国を包みこむ平和の枠組みをつくることです。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)は1976年に東南アジア友好協力条約(TAC)を結び、徹底した話し合いで紛争を戦争にしない努力を半世紀にわたって積み重ねてきました。

 さらに、平和の共同体をASEAN10カ国にとどめず、日本、中国、韓国、アメリカ、ロシア、オーストラリア、ニュージーランド、インドの8カ国にまで広げ、合わせて18カ国の東アジアサミット(EAS)を主導し、毎年首脳会合を開催しています。

 19年の首脳会合では、東アジア規模での平和友好協力条約を結ぶASEANインド太平洋構想(AOIP)を採択しました。

 日本共産党は、こうした外交による平和創出への道を国内外で発展させるため、国際的な連帯も広げています。

 トルコ・イスタンブールで開かれた昨年11月のアジア政党国際会議(ICCAP)に参加し、日本共産党の外交ビジョンをスピーチ。その結果、最終日に採択されたイスタンブール宣言で「ブロック政治を回避し、競争より協力を重視する」という言葉が明記されました。また、欧州の左翼進歩政党との交流も進めています。国際的な連帯で平和を発展させているのは日本共産党だけです。

7 では最後に一言まとめをお願いします。

自衛隊が米軍の指揮のもとで先制攻撃の戦争に参加することは、憲法違反であるだけではなく、国連憲章にも違反する違法な戦争に米軍と一緒にたたかうことになります。   予算は成立しましたが、やっとマスコミも取り上げははじめました。闘いはこれからです。  これからも署名などで大軍拡・大増税を辞めさせる為に頑張りましょう。

 (312日赤旗日曜版326日赤旗日刊紙)

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