菫の程の小さき人に生まれたし
菫の程の小さき人に生まれたし
『凡人のためのあっぱれな最期 古今東西に学ぶ死の教養』を読みました。本書は著者・樋口裕一氏が、61歳で乳がんにより亡くなった妻の最期を通じて「あっぱれな最期」とは何かを探求した作品です。
妻の死に際して家族が悲しみや混乱の中にいる中、彼女は嘆かず、恨まず、泰然と死を迎えました。
この経験を基に、著者は夏目漱石の句「菫程の小さき人に生まれたし」に触発され、「小さき人」としての生き方と死に方を考察しています。
古今東西の文学や哲学を引用しながら、平凡な人々がどのようにして立派な最期を迎えることができるのか、その生き方や心構えについて深く考察しています。
感想
1. 死を教養として学ぶ
- 死を単に忌避するものではなく、生きる上で必要な「教養」として捉えています。
- 読むことで、死について考えることが「生」を深く理解する行為であると気付かされます。
2. 古今東西の豊富なエピソード
- ソクラテスは「死は悪ではない」と考えていた。
- 武士道や日本の伝統文化における「潔い最期」の美意識。
- 古代ギリシャから現代日本まで、幅広い時代や文化の事例が紹介されています。
- 歴史や文学、宗教に触れながら、普遍的なテーマである死に関する知恵や考え方を学べています。
3. 平易でユーモアのある語り口
- 難解になりがちな死というテーマを軽いタッチでは書いています。
4. 「凡人」に焦点を当てた視点
特別な人物ではなく「凡人」に向けて書かれている。
- 「あっぱれな最期」とはどういうものか考えさせられた。
5. 現代社会における死の課題に触れる洞察
- 高齢化や孤独死、延命治療など、現代特有の死にまつわる問題にも触れています。
- その中で、どのように死と向き合うべきかという実践的な示唆が得られます。
読み終えて
- より良い生き方とは何か、自分の最期はどうあるべきかを考えさせる。
- 死は普遍的なテーマなので
古今東西の死生観を知ることでしっかりと今を生きられる気がする。 - 現代の医療現場で直面する延命治療の是非についての議論が深く考えさせる。
私の高校同期の樋口裕一さんの博識豊かで人間味あふれる書き方が秀逸です。
これから人生の最期を考えねばならない人におすすめです。
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