古谷円さんの『ひきあけを渡る』を読んで
先日の明星研究会の発表者で二次会でご一緒した古谷円さんから古谷円第3歌集
歌集のタイトルとなった歌はこれだ。
忘れたる夢とりもどしひきあけを渡る一羽よ遠くなりゆく 86
「ひきあけ(引き明け)」は、「夜が明けること」や「夜明け」を意味します。
お父さんの亡くなった日の朝の歌だろう。
同じページにこう言う歌もある。
父死にし病室に機器の音消えて夜の大気のうねりゆく音
病廊に怒鳴る声あり薄目開きまだ温かい父が聞いている
偶々今日は我が父の亡くなって14年の命日なので更に沁みた。
この歌集の白眉だろう。
教師である作者の姿が見える歌も良かった。
雲水は雨のことかと青すぎる眸(め)をきらめかせ少女が問へり 65
ホカホカの肉まん食べたい 呟きに夜の教室が感染してゆく 125
子を産んでやめた教師に戻る日の静かな陽ざしが痛かったこと
147
結婚してよかったか訊く女生徒に二回うなずき源氏の続き 147
他にこんな歌にも惹かれた。
葉が失せて幹の匂いがしはじめる
私の体へ春の雨降る 21
死に向かう父の眠りをさまたげて今日も来たよと肩たたきたり 84
こんな社会詠もあった。
マスク男の顔膨らんだ大画面いよいよ小さく見えたるマスク 120
七人に一人の子どもはご飯がない
豊かなはずの絵日本へ豪雨 143
最後のページにこの歌があった。
水滴がこぼれこぼれて青墨の
登喜子のうたの散らし書きから185
彼女と知り合ったのは5月17日の明星研究家の講演「おつとせい氷に眠る幸を―山川登美子の可能性」
でした。
山川登美子にかける情熱を講演でも二次会でも感じました。
今後とも古谷円さんにも山川登美子にも注目して行きたいと思います。
2025年5月22日
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