「はだしのゲン」がいま私たちに問いかけるもの
8月8日、草加アコスホールで講談を聴きました。
会場いっぱいの500人が参加しました。
この日は、神田香織さんと神田伊織さんによる師弟講談会。
神田香織さんが語ったのは、あの「はだしのゲン」。
そして神田伊織さんが「被爆太郎の物語」を語った。
映像の効果と音楽の効果も訴える力を増やしていました。
8月6日の広島、8月9日の長崎に挟まれたこの時期に聴く「はだしのゲン」は、いつもとは違う重さを持って胸に迫ってきた。
講談師の声と表情、言葉の強弱、沈黙、そして会場に響く一つ一つの言葉によって、原爆が落とされた広島の光景が、まるで目の前に現れるようだった。
そこにいたのは「歴史上の人々」ではない。
昨日まで普通に暮らしていた人々だった。
子どもがいて、家族がいて、学校があり、仕事があり、笑いがあった。
それが一瞬にして破壊される。
原爆とは、そういう兵器なのだ。
何十万人という「数字」で語られることの多い被爆者の一人ひとりに、名前があり、家族があり、人生があった。
その当たり前の事実を、「はだしのゲン」は突きつけてくる。
そして、今回特に強く感じたのは、「記憶を語り継ぐこと」の大切さだった。
神田香織さんが「はだしのゲン」を語り始めて40年になるという。
40年という歳月を考えると、その取り組みの重みを感じずにはいられない。
被爆者の方々が高齢になり、直接その体験を聞くことが難しくなっている。
だからこそ、語り継ぐ人が必要になる。
漫画から講談へ。
師匠から弟子へ。
被爆者から次の世代へ。
記憶は、誰かが受け継がなければ消えてしまう。
私は、この日の講談を聴きながら、そんな「記憶のリレー」を感じていた。
戦争は「昔の話」ではない
今年は戦後81年。
「戦争を知らない世代」が、日本社会の大多数になった。
それ自体は当然のことだ。
しかし、戦争を知らないことと、戦争を忘れてよいことは全く違う。
むしろ、戦争を知らない世代だからこそ、過去の戦争から学ばなければならないと思う。
いま世界では、ウクライナで戦争が続き、ガザでも深刻な犠牲が生まれている。
核兵器を持つ国が存在し核兵器による威嚇さえ繰り返されている。
「核抑止力」という言葉が当たり前のように語られる。しかし、広島と長崎で実際に核兵器が使われ、何が起きたのか。
その現実を私たちは忘れてはならない。
核兵器は「人を守る兵器」ではない。
一度使われれば、兵士だけでなく、子どもも、高齢者も、障害者も、病人も、何の罪もない市民も巻き込む。
そして放射線による被害は、その瞬間だけでは終わらない。
だからこそ、広島・長崎の記憶は、日本だけの記憶ではない。
人類全体の記憶である。
「はだしのゲン」を残したい
「はだしのゲン」をめぐっては、学校図書館での扱いなどをめぐって議論が起きたこともあった。
私は、こうした作品こそ、子どもたちが手に取れる場所に残していくべきだと思う。
もちろん、作品について批判的に検討することはあっていい。
しかし、戦争の悲惨さを伝える作品を、子どもたちから遠ざける方向に進んではならない。
むしろ、
「なぜこんなことが起きたのか」
「なぜ戦争を止められなかったのか」
「なぜ原爆が使われたのか」
「私たちはどうすれば戦争を防げるのか」
を、一緒に考える教材にすべきではないだろうか。
「二度とごめんだ」という声を未来へ
この日の講談を聴いて、改めて思った。
平和は、何もしなくても続くものではない。
戦争を体験した人々が「二度とこんなことを繰り返してはいけない」と語り続けてきたからこそ、私たちは戦後81年を戦争のない国として生きてくることができた。
そのバトンを、今度は私たちが受け取る番だ。
そして次の世代に渡さなければならない。
「戦争をしない国」を守ること。
核兵器をなくすこと。
被爆者の声を残すこと。
戦争によって命を奪われる人を一人でも減らすこと。
それは決して遠い話ではない。
私たち一人ひとりの問題だ。
8月8日、草加アコスホールで聴いた「はだしのゲン」。
笑いも、怒りも、悲しみも、そして生きようとする力も込められた講談だった。
私はその声を聴きながら、ゲンの叫びは今も終わっていないのだと思った。
「戦争はもうたくさんだ」
「核兵器はなくさなければならない」
その思いを、私たちの世代から次の世代へ。
そして、その次の世代へ。
「はだしのゲン」が40年にわたって語り継がれてきたように、平和への願いもまた、語り継いでいきたい。
8月8日の講談会は、私にとってそんなことを改めて考えさせてくれる時間だった。これを我が町でもやれればと思いました。
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