種田山頭火の句集「草木塔」を読みました。
23句と文章を選んで★でコメントします。
音数も調査しました。
表題にこう有るようにこの句集は母親に捧げている。
(若うして死をいそぎたまへる母上の霊前に本書を供へまつる)
山頭火の生涯にわたるのしみの原点である。
では以下の通りです。
鉢の子
大正十五年四月、解くすべもない惑ひを背負うて、行乞流転の旅に出た。
分け入つても分け入つても青い山
昭和二年三年、或は山陽道、或は山陰道、或は四国九州をあてもなくさまよふ。
★あまりにも有名な句です。宮崎の山中で詠まれたようです。分け入つてものリグレインが山の深さを感じさせます。
投げだしてまだ陽のある脚
★実感が感じられる句です。5・8音。
まつすぐな道でさみしい
★人生は5曲がりくねった道がいい。5・7音。
昧々居
酔うてこほろぎと寝てゐたよ
★こういう旅をしてみたい。8・5音。
自嘲
うしろすがたのしぐれてゆくか
★ 山頭火は自分を後ろから見ている。自分を客観視している。
鉄鉢の中へも霰 5・7音
★ 行乞では鉄鉢の中にいろんなものが入るだろう。
或る友に
ぬいてもぬいても草の執着をぬく 4・4・8・2音
★草取りをするとこの句は良く分かる。この句に執着しています。4・4・8・2音
行乞途上
あざみあざやかなあさのあめあがり
★「あ」音が4つで谷川俊太郎の詩のようです。3・5・3・5音
昭和七年九月二十日、私は故郷のほとりに私の其中庵を見つけて、そこに移り住むことが出来たのである。
曼珠沙華咲いてここがわたしの寝るところ 5・6・9音
★小郡の其中庵での7年に及ぶ定住生活の始まりの歌です。
或る若い友
ふくろうはふくろうでわたしはわたしでねむれない
★定住生活になじめないか。5・5・8・8音。
あるけばきんぽうげすわればきんぽうげ
★山頭火はこの句を捨てて草の実の句を残すと書いているが私はこちらの方が好きです。8・8音。
あるけば草の実すわれば草の実
★漢字でない方がいいか。8・8音。
うたふものの第一義はうたふことそのことでなければならない。私は詩として私自身を表現しなければならない。それこそ私のつとめであり同時に私のねがひである。(昭和九年の秋、其中庵にて 山頭火)
霽れて元日の水がたたへていつぱい
★ 家族と一緒の正月だったか。4・8・4・4音。
ぬくうてあるけば椿ぽたぽた
★ 暖かくなると椿の花は確かにぼたぼた落ちる。8・7音
私は雑草的存在に過ぎないけれどそれで満ち足りてゐる。雑草は雑草として、生え伸び咲き実り、そして枯れてしまへばそれでよろしいのである。昭和十年十二月二十日、遠い旅路をたどりつつ 山頭火)
信濃路
あるけばかつこういそげばかつこう
★長野の郭公の泣き声が聞こえて来ます。7・7音
大阪道頓堀
みんなかへる家はあるゆふべのゆきき
★山頭火には帰る家はない。6・5・7音
千人風呂
からむものがない蔓草の枯れてゐる
★人間にはからむものが必要なのでしょう。8・5・5音。
結婚したといふ子に
をとこべしをみなへしと咲きそろふべし
★ひょっとして男の子と女の子を期待すると子に言っている? 5・6・7音
街頭所見
月のあかるさはどこを爆撃してゐることか
★戦争の始まる前に良くこういう句を詠めたと思います。5・7・7音。
遺骨を迎へて
街はおまつりお骨となつて帰られたか
★これもすごい。7・7・6音。
お骨声なく水のうへをゆく
★橋を渡る無言の帰還兵か? 6・7・3音
戦傷兵士
足は手は支那に残してふたたび日本に
★戦前のプロレタリア俳句を思い起こさせます。5・7・8音
妹の家
ふるさとはちしやもみがうまいふるさとにゐる
★ 「望郷は権利である」と山頭火の後輩の啄木も言っています。
うまれた家はあとかたもないほうたる
★ 同じ感慨を共有しています。7・7・4音。
貧農生活 二句
働らいても働らいてもすすきツ穂
★働く者の句ですね。啄木の「働いても」の歌を思い出します。6・6・5音
身辺整理
焼いてしまへばこれだけの灰を風吹く
★ 山頭火は日記を一度全部焼いている。今残っているのは再度書き始めて以降の日記です。7・7・4音
しかしその残された日記から多くを辿れ、全国に500も句碑が建てられている。
――
数量的考察
EXCELを使ってこの23句の音数の数量的分析をやってみた。サンプル数も少なく明確な相関傾向は取れなかった。
しかし分かったこともある
① 総平均は平均は17音であること
②二句あったのは以下の4つであること。
8・5
8・8
7・7・4
5・7
以上です。
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