弁護士fujita的日々 @京都より借用
朝日新聞2006/12/02(土)付社説
いま生活保護を受ける人が、全体の7割近くを占めている。国民年金は一部を受給できるようになったが、月額わずか2万円余にとどまるうえ、その分は生活保護費から差し引かれてしまう。
生活を支えるために、判決は生活保護とは別の給付金や年金の制度が必要だとも指摘している。まったく同感だ。
与党の国会議員がプロジェクトチームを発足させ、給付金制度を検討しているが、作業は進んでいない。新たな制度のための立法を急いでもらいたい。
敗戦時に、そして帰国した後にも、国から棄(す)てられたと感じている孤児にとって、この裁判は人間の尊厳を取り戻す闘いだった。
「やっと、日本人に生まれ変わりました」。晴れやかに話す孤児の思いを踏みにじってはいけない。
毎日新聞2006/12/02(土)付社説
残留孤児の親たちは戦前、国策によって中国東北部の危険な地域に入植した。戦争末期のソ連軍侵攻に当たって、健康な男性は根こそぎ軍に動員され、残った家族は国の保護のないまま戦闘に巻き込まれたり、集団自決を遂げるなどで離散し、幼い子供たちが中国人に引き取られた。
判決はこれらの点を「自国民の生命を軽視した無慈悲な政策であった。戦後の政府はその政策によって発生した残留孤児を救済する政治的責任を負う」と指弾した。歴史をきちんと振り返れば、当然の結論である。
東京新聞2006/12/02(土)付社説
拉致被害者は五年を限度として、生活保護よりかなり高い水準の給付金を受けている。しかも、社会適応指導やきめ細かな就労支援を受けることができる。
その点、残留孤児は高齢での帰国者が多いのに、国の施策による日本語の習得期間も短い。十分な会話ができないため、仕事をしたくとも、ままならない不遇をかこった。
ドミニカ共和国移民に対して、東京地裁は今年六月、政府の対応を「違法」とした。それを受け、特別一時金支給法が成立した。残留孤児に対しても、知恵は出せるはずだ。
この国の国民として生まれてよかったという施策が望まれる。各地の裁判所で今後、「勝訴」の“ドミノ”が起こる兆しかもしれない。
神戸新聞 06・12・02社説
公営住宅の優先入居や国民年金の三分の一程度を支給する特例措置が徐々に整備されたが、七割もの人が生活保護を頼りにしているのが実態だ。
その生活保護すらも、養父母の墓参りや見舞いに中国を訪れれば、滞在期間分を差し引かれる。「祖国で、日本人として人間らしく生きたい」という願いが、全国にまたがる集団訴訟の背景である。
「国民が等しく受忍しなければならない戦争被害」が国の主張で、最初の判決となった大阪地裁の判断はこれを認めたが、二例目の神戸地裁判決は「日中国交正常化後の政府の違法行為による損害」とした。後に続く裁判に影響を与える判決の持つ意味はきわめて大きい。
国会では、議員立法で新たな支援策を目指す動きもある。神戸判決を機に、政府は「もう孤児と呼ばせない」支援策に向けて踏み出すべきだ。
判決は「原告の損害は政府関係者による違法な職務行為によるものだ」として、国が主張する「戦争による損害なのだから国民が等しく受忍すべきだ。孤児だけ特別視はできない」という戦争損害論を退けた。
愛媛新聞2006/12/02(土)付社説
残留孤児は他の戦災被害者や引き揚げ者と違い、戦後日本の経済成長の恩恵を受けていない。本人の意に反して異国に何十年も置き去りにされており、むしろ拉致被害者と共通点が多い。戦争損害論は、賠償責任を免れるための理屈としか思えない。
信濃毎日新聞 06年12月2日(土)付社説
二つの点で国の責任を認めた点に、今回の判決の特徴がある。
一つは、戦後の早期帰国策だ。1972年の日中国交正常化によって、国は具体的な対策ができるようになった。にもかかわらず、身元保証書の提出がなければ入国を認めないなど帰国を制限した、と踏み込んでいる。
もう一つは、帰国者に対するバックアップである。北朝鮮拉致被害者への支援策を引き合いにしながら、「永住帰国後5年間は、生活の心配をしないで日本語習得などの支援を行う義務があったのに怠った」と、指摘している。
判決を受け、安倍首相は支援策を検討する考えを表明した。これ以上争うべきではない。安心できる暮らしを一刻も早く保障するのが、政府の役割である。
西日本新聞2006/12/02付 社説
注視すべきは、北朝鮮の拉致被害者に対する対応と、孤児支援策の格差を指摘したことだ。孤児たちには、拉致被害者が法律上受ける支援措置と同等の自立支援措置を受ける権利があるという。
高齢化が進む孤児たちは、国の心からの謝罪を求めている。孤児たちの「日本人として、人間らしく生きる権利を」との切実な願いをいつまでも放置していては、国の人権感覚が問われかねない。
国は孤児の支援策について、抜本見直しを迫られていることを自覚すべきだ。
北海道新聞 06.12.02社説
原告のほとんどは六十歳を超え、高齢化が進んでいる。帰国後の日本語教育や就労支援は十分と言えず、七割以上が生活保護を受けている。
経済的自立を後押しするのは犠牲を強いてきた国として当然の責務だ。
自立支援制度を創設し、年金や給付金を支給するといった救済策を早急に講じてほしい。
中国大陸には帰国がかなわない孤児がまだ残っており、訪日調査が続く。集団訴訟の弁護団は「人間性を取り戻す訴訟」と位置づけている。
孤児たちは中国と祖国日本で二度捨てられた。これ以上放置できない。
河北新報 06.12.02 社説
国はこれまで原告の被害を「戦争損害」と位置付けて、賠償責任はないと主張してきたが、判決は「違法な職務行為による損害」として退けた。
国にすれば、違法性を認めることは困難に違いない。だが、現状のままでは残留孤児の将来は開けない。安倍晋三首相自らの政治決断を求めたい。
高知新聞 06.12.02 社説
画期的な判決ではあるが、原告4人について帰国時期が早いことを理由に請求を認めなかった点は納得できない。行政の違法行為に「時効」を認めることの妥当性が、もっと論じられてもよいのではないか。
高知を含め全国の同種訴訟には、永住帰国した孤児の8割以上が参加している。国はその事実を率直に受け止めるべきだ。孤児の高齢化が進む中、いたずらに訴訟を長引かせるのではなく、支援策の充実へと転換する時期にきている。
行政の「怠慢」を放置してきた国会の責任も重い。与党のプロジェクトチームが残留婦人を含む帰国者への支援策を検討しているが、立法化を急ぐ必要がある。
旧満州(中国東北部)への国策移民の決定から70年、戦後も既に61年になる。これ以上、「棄民」を続けてはならない。
中国新聞 06.12.02 社説
判決文の言葉が重い。旧満州(中国東北部)に、一般の邦人を無防備な状態に置いた戦前の政府の政策は、自国民の生命、身体を著しく軽視する無慈悲な政策だったというほかない―と指弾。平和憲法の理念を国政のよりどころとする戦後の政府も、孤児を救済すべき高度な政治的責任を負っているとしている。
南日本新聞 06.12.02 社説
注目したいのは、中国残留孤児と北朝鮮の拉致被害者とを比較、問題を指摘した点だ。判決は両者への政府対応に「落差」があるとし、「原告らには、拉致被害者が受けられると同等の自立支援措置を受ける権利がある」とした。
以上12社の社説のポイント部分と思われる所でした。
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